プロジェクト概要:
 脱国家化世界における欧州統合の意味

 従来、世界政治においては主権国家が主要な行為主体であった。
 しかしながら、近年では、政府(国家)に限られない政治・経済行為主体が現実として国境をこえた活動を展開するようになり、国家や主権の役割に変容を迫っている。

 本プロジェクトの主要な研究課題は、このような脱国家化している世界において欧州統合(欧州連合すなわちEUにおける取り組み)が国家・主権に対してもつ示唆を究明すること、より具体的にはヨーロッパの経験から何を学ぶことができるのかを解明することである。

 研究テーマの追究にあたっては、複数のディシプリンからアプローチすることによって、脱国家化する世界において欧州統合が国家・主権に対してもつ示唆を複眼的に明らかにしていく。

 本プロジェクトが取り組む課題(サブ・テーマ)は以下の通りである。

@セキュリティガバナンスにおけるEUと市民
 たとえばCFSPのペータースブルク任務のようなEUの取り組みに各国政府やEU市民がどの程度支持を与えるか、あるいはEUが域外の人道的問題に取り組む理由やその方法を検討することによって、従来政府が権限を有してきた広義の安全保障問題をめぐる変容と示唆を明らかにする。

AEUにおける法的多元主義と脱国家的な法の支配
 EUの経験にてらして、今日の世界において法的多元主義や脱国家的な法の支配が介在する可能性や条件について検討する。

B欧州化とグローバル化の文脈における経済繁栄と民主主義
 経済的な繁栄と民主主義、経済、社会、政治的な見地からそしてグローバル、リージョナルな見地からみた国家の主権と脱国家主義の均衡といった観点からEUの取り組みを解明する。

C欧州統合と国家主権に関する歴史的分析
 これまで展開されてきた脱国家主義と各国主権の相克・和解について検証することによって、双方が衝突あるいは調和する条件について考察する。

D欧州文化・言語政策の文脈における多様性のなかの統合
 より緊密化していくEUのなかで機能的な一体性と文化や言語の多様性のバランスをどのようにとるのかを検討する。